研究概要 |
本研究は,有機化学反応機構における電子状態および溶媒効果を理論的に検討することを目的とする.本年度の成果と進捗状況は以下の通りである. (1)昨年度に引き続き,置換オキセテンの開環反応の立体選択性における電子状態の影響についてB3LYP密度汎関数法計算および実験的に検討し,アルコキシメチル置換オキセテンの開環反応ではキレート効果が見られないことを明らかにした.またそのアルコキシ基によって選択性が大きくなるという置換基効果についてnatural bond orbital解析を行った.その結果切断するC..O結合とメトキシ基のO-Meの超共役の効果が大きいことを示した. (2)有機銅-リチウム会合体のエノン,エナールとの共役付加反応の機構を検討した結果,ともにC-Cu結合へのオレフィン部分の挿入反応であることを明らかにした.また溶媒和の効果を検討した結果,炭素-炭素結合生成以降のエネルギー変化が変わること,生成物のIRスペクトルに影響することを明らかにした. (3)Hg^<2+>をはじめとした金属イオンとシステインの相互作用についてnatural bond orbital解析によって検討した.結合エネルギーの金属イオンによる相違は金属-硫黄反結合軌道と酸素の非共有電子対との二次軌道相互作用に由来することを明らかにし,現在投稿準備中である.水銀(II)塩の解離について水溶媒の極性だけでなく配位の影響が大きいことを,PCM法及び水和モデルを用い示した. (4)安価な塩化鉄(III)触媒を用い,アルデヒドからベンジルエーテルの合成に一段階で成功した.
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