研究概要 |
まず昨年度の検討によって合成したAr_3CSiCl_3,1(Ar=2-MeO-5-t-Bu-C_6H_3)の官能基変換を検討した。1に対してAgBF_4を反応させたところ、1の塩素原子がフッ素原子に置き換わったAr_3CSiF_3,2の合成に成功した。この反応機構は次のように考えられる。すなわち、銀により塩化物イオンが引き抜かれ生成したシリセニウムカチオンが、テトラフルオロボラートからフッ化物イオンを引き抜き、Ar_3CSiFCl_2を与え、この反応を繰り返すことで2が得られたものと考えられる。2のX線結晶構造解析を行ったところ、三つのメトキシ基が中心ケイ素原子に対してフッ素原子のちょうど反対側に位置し、メトキシ基の酸素原子の孤立電子対がSi-Fの反結合性軌道と相互作用しており、ケイ素原子周りは7配位構造をとっていることがわかった。またメトキシ基の酸素原子とケイ素原子間の原子間距離は1に比べて若干短くなっており、ケイ素原子と酸素原子との間に吸引的な相互作用があることが示唆された。続いて1のメトキシ基の脱メチル化を検討した。脱メチル化試剤としてはTMSI, BBr_3を検討した。TMSIとの反応においては生成物の同定には至らなかったが、1に対してBBr_3を作用させた後、エタノールで処理をしたところ、3段階の脱メチル化が進行した後、三つのケイ素-酸素結合が生成した結果、三環性のシラン3に対して、エタノールが1分子配位したと思われる化合物4を得た。4の水処理を行ったところ、配位エタノール分子が水分子へと置き換わった5が得られた。化合物4および5の構造の詳細について現在検討中である。以上のように、本計画は計画通り遂行できた。
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