研究概要 |
1.新しく設計したポリマー型人工ホスト分子の糖に対する固液抽出能の調査 前年度は従来の人工ホスト分子を用いた系において、糖のベンゾイル化に特徴的な位置選択性が得られることが分かった。本年度はその特長をさらに強めることを目指し、改めて人工ホスト分子の再設計から取り組んだ。まず、従来の人工ホスト分子の認識部位であったトリピリジン骨格に着目し、これを長鎖状に連ねて2,6-エチニルピリジンポリマーとすることで、より強い分子認識能とそれに伴う固液抽出能が得られるのではないかと考えた。2,6-ジブロモピリジンを出発原料とし、薗頭反応を繰り返すことにより、2,6-エチニルピリジンポリマーを効率よく合成することに成功した。そのポリマーに、塩化メチレン中で各種オクチルグリコシドを作用させたところ、ホストーゲスト会合と、それに伴うらせん型高次構造の形成が観測された。続いて、有機溶媒に不溶な天然型のヘキソースに対し、ポリマーの塩化メチレン溶液を加え、その懸濁液(固液複相系)を撹拌した。すると、固相中の天然型の糖が液相中に抽出され、さらにオクチルグリコシドの場合と同様にらせん型高次構造の形成が観測された。 2.ポリマー型人工ホスト触媒分子の設計と合成 前項において、ポリマー型人工ホスト分子が糖に対して固液抽出能を示すことが確認された。そこで、本研究課題で目指す糖合成プロセスを構築するにあたり、触媒としてそのポリマー骨格を利用することにした。様々な求電子型反応の触媒として知られる4-(ジアルキルアミノ)ピリジンの2,6位を、アセチレン結合を介して連結し、前項の人工ホスト分子と同様の構造を持つポリマーを合成した。このポリマーは、触媒に必要な性能として、糖に対する分子認識能と固液抽出能をともに備えていることが円二色性スペクトルにより観測された。
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