研究概要 |
二光子吸収により誘起される光化学反応により,液晶の相構造変化を誘起できるか検討した。二光子吸収色素としてスチルベン誘導体を導入した低分子液晶を用い,レーザーパルス照射による液晶相状態の変化を偏光顕微鏡で観察した。その結果,色素が一光子吸収を全く示さない680nmのレーザーパルスを照射すると,照射部位のみで液晶相-等方相相転移が誘起されることが分かった。これは,二光子励起によりスチルベン誘導体の異性化・環正反応が誘起され,液晶の相構造が不安定化されたためである。 二光子吸収性スチルベン誘導体を共重合により導入した高分子液晶を用いても,低分子系と同様に光相転移を誘起できた。高分子液晶系では,誘起された等方相のサイズは照射レーザーパルスのスポットサイズより小さく,光の回折限界をこえる高解像度を達成できた。さらに,Tg以下の温度で保存することで,等方相は長期間安定に存在することが明らかになった。以上の結集から,二光子吸収色素を導入した高分子液晶は超高密度光記録材料へ応用できる可能性がある。
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