研究概要 |
天然色素アントシアニン類の基本骨格であるフラビリウム塩は結晶化の条件によって,黄,緑,赤の3種類の状態をとり,これらの色の状態は溶媒極性,濃度,水等の条件に依存することが当研究室の研究で明らかになった.溶液での色の変化の詳細な検討,および溶液中では不安定であるフラビリウム塩のポリマー中へのドーピングによる固定化を試みた. (1)溶媒効果の検討 極性および粘性の異なる種々の溶媒(エタノール,プロビレングリコール,2-ブタノン,ジオキサン)を用いてフラビリウム塩の溶媒効果について検討した.吸収スペクトルの測定結果からエタノール中においても3種の存在が確認された.また,濃度効果も見られ,低濃度条件では黄色種(モノマー)から緑種への変化より,開環反応の方が起こりやすいことがわかった.また,極性が高く高粘性のプロピレングリコールでは低濃度条件では緑種から開環化合物へのパスが観測された.極性効果の結果から緑種が電荷移動錯体と推測することができた.以上の結果から,極性および濃度によって反応の切り替えが起こっていることを示した(J.Photochem.Photobiol.A : Chem.,161,111-118(2004)で発表済).固体においても再結晶条件で3種の切り替えが起こることを示した.(Research on Chemical Intermediatesで受理済). (2)ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いた化学修飾によるドーピング 比較的容易に使うことができるポリマーとしてポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いて化学修飾を行なっている.現在,目的の化合物が少量であり,収率向上のために合成条件を再検討中である.
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