研究課題
若手研究(B)
昨年度の調査では、ヤナギルリハムシの寄主選好性が高緯度ほど強くなることが確認された。この現象は、ヤナギ熱のフェノロジーおよび質的な形質の時間的変動が、高緯度の1化性個体群よりも低緯度の多化性個体群の方が大きいことに起因すると考えられる。本年度は、昨年度までの成果に基づき、寄主選好性が強かった北海道石狩個体群と寄主選好性が弱かった和歌山県高野口町個体群を用いて、各種ヤナギ上におけるヤナギルリハムシの季節消長と寄主であるヤナギ類のフェノロジーおよび質に関する詳細な季節データを取り、個体群間の比較を行った。その結果、ヤナギルリハムシの北海道石狩個体群は1化性で、ほとんどの個体がオノエヤナギ上で観察された。一方、和歌山県高野口町個体群はおおよそ3化以上で、複数のヤナギ種上でヤナギルリハムシ個体が観察されただけでなく、ハムシ個体数が多かったヤナギ種も季節によって異なった。ヤナギの質を反映する葉の枚数、硬さ、含水率窒素量、葉緑素量についてもヤナギ種間で異なったが、その季節的変動性は北海道石狩よりも和歌山県高野口町の方が大きかった。そのため、和歌山県高野口町個体群の方がヤナギ種間でこれらの形質値の順位が季節によって入れ替わることが多かった。この結果は、ヤナギ類の質に見られる時間的変動が、高緯度の1化性個体群よりも低緯度の多化性個体群の方が大きいことを示し、この時間的変動の大きさにより低緯度では特定のヤナギ種への選好性が進化しなかったと考えられる。
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Ecological Entomology 29
ページ: 467-481