研究概要 |
花粉の飛散をコントロールすることは、遺伝子組換え植物の花粉が環境に放出されるのを防ぐために必須の技術であるとともに、現代病ともいえる花粉症を防ぐためにも欠かせない技術である。本研究では次の3つの研究を行い、それぞれ成果を挙げた。 1.葯の裂開に異常を示し、花粉の飛散が起きないようなシロイヌナズナの突然変異体をスクリーニングし、15個の突然変異体を単離することができた。そのうち6個について原因遺伝子を同定した。原因遺伝子はDAD1,AOS, OPR3,COI1で、いずれもジャスモン酸の生合成・シグナル伝達に関与する既知の遺伝子座であったが、異なるエコタイプをバックグラウンドに持つアリルを手に入れることができた。これらのアリルは、今後サプレッサー変異等のスクリーニングを行うのに有用なツールである。 2.dad1突然変異体と野生型の蕾を用い、蕾の成熟に伴ってDAD1依存的に発現が上昇する遺伝子の検索をDNAマイクロアレイを用いて行った。91個の遺伝子を同定した。 3.ジャスモン酸は、リパーゼの働きで生成したリノレン酸を出発物質として生合成される。シロイヌナズナの蕾ではDAD1がリパーゼとして働いて満の裂開に必要なジャスモン酸を供給するが、ジャスモン酸の傷害誘導に関与するリパーゼは未同定である。これを同定することを目的として、DAD1類似遺伝子の解析を行った。その結果、DAD1自身が、DAL6とともに傷害誘導時のジャスモン酸生成にも大きく寄与しているらしいことがわかった。一方、DAL2,DAL3,DAL4の関与も疑われ、この点に関してはさらに解析が必要である。
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