研究概要 |
今年度は研究年度の最終年度として,インドネシア科学院生物学研究所のスリィ・ハルティニ氏と共同で,インドネシアの様々な島嶼で採集された甲虫便乗性ハエダニ類の分類をまとめた。これまでに,ジャワ,スマトラ,カリマンタンのスンダ陸塊に属する島々,小スンダ列島(バリ,ロンボック,スンバ,スンバワ,チモール,フローレス),スラウェシ,イリアンジャヤの計56地点で得られたハエダニ類を精査した結果,4属52種のハエダニ科ダニ類を記録した。それらの中には,未記載種16種,インドネシア初記録種6種,既に記載公表済みの種10種が含まれている。本研究では確認できなかったが以前に記録されている種を加えるとインドネシア産のハエダニ類は5属59種となる。 島嶼におけるハエダニ類の種構成に基づいた解析から以下のことがわかった:1)インドネシアのハエダニ相は東南アジア大陸部の影響を強く受けており,インドネシアの島嶼を東進するに連れて種数が減少する傾向にあるが,イリアンジャヤでは種数が増える;2)イリアンジャヤおよびスラウェシでは他の島と比較して固有種率が高い;3)インドネシア全体の固有種率も高率である。これらのことから,ハエダニ類はインドネシアで分化を遂げ,アジア大陸から離れた比較的大きな島嶼で著しい分化を遂げていることが示唆される。 なお,今年度の研究成果の一部は,日本動物分類学会英文誌Species Diversity,日本昆虫学会英文誌Entomological Scienceで公表済みもしくは印刷中である。本研究成果を総括するインドネシア産甲虫便乗性ハエダニ類の再検討に関する論文を,できるだけ早期に国際誌に投稿できるよう現在準備中である。
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