研究概要 |
GaN系磁性混晶半導体(MAS)におけるキャリヤ誘起強磁性(CIF)発現とその現象を利用した新しい磁気光学素子の創製を目指して研究をおこなった。本年度は、GaN系MASでは不純物バンドにおける2重交換相互作用による強磁性発現とバンド端発光の評価に焦点を絞り研究をおこなった。 (Al,Ga)N/(In,Ga,Mn)N/(Al,Ga)N量子井戸構造において観測されるバンド端発光について異なるIn組成をもつ試料おける発光特性の比較をおこなった。その結果、In組成増加に対し、Mn^<2+>イオン内殻d-d遷移からの発光はシフトしないのにもかかわらず、バンド端付近の発光ピークは低エネルギー側ヘシフトすることが観測され、この発光がバンド間遷移に強く関連した発光であることが確認された(JJAP投稿中)。また磁場下での発光スペクトル測定をおこなったが、発光ピーク幅が広く期待したバンドのスピン偏極による発光ピークの分裂を観測するまでには至らなかった。 昨年度の研究成果から(Ga,Mn)N中のMnアクセプタ準位がバンドギャップ内の深い位置に形成されること、また結晶欠陥が原因と考えられる電荷補償によってその不純物バンドが電子で満たされているため強磁性が発現していないことが明らかになっていた。そこで、本年度は光照射、電界印加などの手法を用いて不純物バンドから電子を引き抜き、強磁性を発現させることをねらった実験をおこなったが、強磁性発現を確認することはできなかった。 本研究で得られた成果をまとめと次の2点となる;(1)GaN系MASにおいて不純物バンドの存在を実験的に明らかにし、強磁性発現への指針を得た、(2)GaN系MASの円偏光発光素子材料としての可能性を見出した。また結晶成長の方法などの改良などによって、電荷補償の原因となっている結晶欠陥を低減することで将来的にはGaN系MASにおいて強磁性が発現できることが本研究の研究成果から期待される。
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