研究概要 |
平成14年度には直径50μmの微細銅線の基本的な疲労強度特性を明らかにした.引き続いて平成15年度は,(1)実際の電子機器の配線を模擬した疲労試験片(プラスチック・フィルムに微細銅線を接着)を用いて実物の疲労強度向上に関する研究,(2)有限要素法を用いてフィルムを含めた疲労試験片の応力解析,(3)有限要素法解析の妥当性を確認するための疲労試験を行った.結果をまとめて以下に示す.(1-1)微細銅線の疲労限度に相当する振動の振幅を配線形状を変えて2倍に向上させた.曲げ応力をねじり応力に変換する配線形状が有効であった.(1-2)疲労き裂が発生する位置にもとの接着剤と混合する別の種類の軟らかい接着剤を塗布した.その結果,疲労強度はさらに1.5倍増加した.銅線の拘束が軟らかくなり,銅線の応力を低下させたものと考えられる.(1-3)銅線とフィルムを点状に接着する方法では疲労強度の向上はみられなかった.(2-1)有限要素法による応力解析を行って,振動の振幅を破断位置の応力値に変換することができた.(2-2)応力解析によって求められた銅線の破断位置の応力値は,配線形状によらず一定となった.(2-3)2Dモデルと3Dモデルの応力値の差は5%程度であり,2Dモデルでも応力解析の精度は十分であった.(3-1)曲げ疲労試験において材料力学的に求めた破断部の応力は,有限要素法の応力解析で求めた応力と一致し,またその値はフィルムを含めた解析の値とも一致した.よって,解析の妥当性が確認された.(3-2)曲げ疲労試験において銅線の固定をはんだで行った場合には接着によって固定した場合に較べて疲労強度が低下した.はんだに含まれるすず中への銅の拡散と接着剤に較べて硬く固定されることが原因と考えられる.(3-3)微細銅線の引張圧縮荷重(R=-1)で疲労試験を行う方法を考案した.(4)以上を総合して,直径50μmの銅線の疲労強度について,実物の荷重と配線方法を考慮して,疲労強度を定量的に評価する方法を確立した.
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