研究概要 |
今年度は,Sn-8Zn-3Biはんだの多軸負荷におけるクリープ疲労寿命に及ぼすひずみ波形の影響を調べるために,引張・圧縮負荷と繰返しねじり負荷のクリープ疲労試験を実施した.試験で用いたひずみ波形は,Fast-fast(PP)波およびSlow-slow(CC)波,Slow-fast(CP)波およびFast-slow(PC)波の4種類の三角波と,保持を伴う台形(TH)波の合計5種類である. 得られた結果から、多軸負荷におけるクリープ疲労寿命に及ぼすひずみ波形の影響と各種のクリープ疲労寿命評価則の適用性について検討を行い,以下の結果を得た. 1.5種類のひずみ波形で引張・圧縮および繰返しねじりの低サイクル疲労寿命をミーゼス型の相当塑性ひずみ範囲で整理すると,同じ波形では繰返しねじりの破損寿命が,引張・圧縮のそれよりも2倍程度長くなる傾向があった. 2.破損寿命に及ぼすひずみ波形の影響は,引張・圧縮と繰返しねじりの違いによる大きな差はなかった. 3.線形損傷則による寿命予測では,引張・圧縮のTH波,繰返しねじりのPP波とTH波の破損寿命は係数2のばらつき範囲でうまく整理された.しかし,引張・圧縮と繰返しねじりともにCC波,CP波およびPC波の破損寿命が係数30の範囲で安全側に大きく外れて整理され,有効な多軸クリープ疲労寿命則ではないことが判明した. 4.周波数修正則は,CC波およびTH波については良好に寿命予測できたが,CP波およびPC波では,破損寿命が係数500の範囲で安全側に大きなばらつきが生じた. 5.粒界すべり損傷モデルに基づくクリープ疲労寿命評価則は,引張・圧縮および繰返しねじりにおけるクリープ疲労寿命を係数2の範囲で整理可能であった.
|