研究概要 |
本研究では,骨を実際に構成している生体活性なアパタイトを生体内での荷重負荷(リモデリング効果)を利用した応力誘起により生体骨組織をチタン合金表面に創成する生体融和チタン合金を提案すべく本研究を遂行した.すなわち,アルカリ溶液で化学処理を施したチタン合金を体内に埋めると体液と反応し,その表面に骨の無機質に類似したアパタイト層を形成し,骨から生体融和チタン合金へ傾斜構造で変化させ骨結合を強化する手法を提案するものである. 本年度においては,(1)昨年度実施したin vitro骨類似析出環境に繰返し荷重を加えた骨の応力誘起効果を応力振幅をパラメータとし,組織構造変化,耐食性,寿命特性のについて継続検討した.(2)血清や骨形成に必要な細胞等の蛋白質を添加した生理環境中にける骨類似アパタイト層の析出能と力学特性の関係について検討した.これら環境で生成した骨類似アパタイト層とチタン合金基盤の接着性および実際に同材料をウサギ大腿骨にインプラントし,生体骨との結合力について評価した.その結果, 1)応力振幅を変化させた条件下においても,アパタイトの析出効果は認められるが,流れの作用がある環境では,荷重の有無に関わらずアパタイトの溶解が生じる. 2)血清や骨形成に必要な細胞等の蛋白質を添加した生理環境中においても骨類似アパタイトの析出能は発揮された. 3)同材料をウサギ大腿骨にインプラントし,昨年提案した界面(接着)強度評価方法を用い,密着状態を詳細に評価・解析した結果,インプラント期間の増加に伴うアパタイトの析出が,密着強度の向上に寄与することが明らかとなった. これらの結果より,in vitroで蛋白質および骨形成細胞との生理的な関連から同材のインプラントを実施し,骨との直接結合への可能性とそのメカニズムの解明を明確にした.
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