研究概要 |
一般に機械加工では,穴はドリルで加工されるため,直穴しか加工できない.よって,直穴が適さない場合にも,直穴を駆使するしかない.このような現状に対し,長く複雑な曲線状の穴を加工する新技術を確立できれば,従来不可能であった形状が加工可能となり,高付加価値製品を生み出すことができる.そこで,材料中を放電加工しながら曲線軌跡を進行する機構を開発し,高い自由度をもつ曲がり穴を加工できるシステムについて研究した.本年度は,本システムを構成する3つの要素のうち,主に自律的放電加工機構について研究を行い,以下の成果を得た. 1.測定システムの開発 自律的放電加工機構による電極位置制御性能を定量的に評価するため,電極の運動を直接測定するシステムを考案した.本機構は,放電加工を維持するために自律的に電極の位置を制御するが,その運動は加工液中におけるマイクロメータオーダの高速な振動を伴ったものとなる.液体中において,このような運動をする物体の測定方法はなかったため,独自に測定システムを開発した. 2.電極動作の測定と定量的評価手法の確立 開発した測定システムを用いて,自律的放電加工機構が放電加工を持続させる際の電極運動を直接測定できた.これによって,本機構が実際に電極の位置を自律的に制御し,安定な放電加工を維持していることを証明した.また,これにより,本機構の電極位置制御性能を評価する定量的な手法が確立できたため,本機構の構成部品の最適化も可能となった. 3.各要素技術の統合のための機能強化 3つの要素の統合によるシステムの完成に向けて,他の2つの要素すなわち方向制御機構と管内移動機構のさらなる機能強化を行った.具体的には,方向制御機構については形状制御性の高自由度化を,管内移動機構については曲がり穴形状への追従性強化を図った. これにより,各要素技術の統合によるシステムの完成にめどをつけることができた.
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