研究概要 |
小形の部品や金型を高い精度で加工するために,数十nmの精度と数十mmのストロークとを有する送り駆動系が必要となっている.このような性能を持つ送り駆動系は,ボールねじところがり案内とを用いた機構をACモータで駆動する粗動に圧電素子による微動を組み合わせて実現されている.しかし,機構が二つあることから構造が複雑になり制御が難しく装置も大きくなる. ころがり要素を用いた粗動に微動を組み合わせる理由は,鋼球のころがりの非線形挙動の影響で粗動の精度が1μm程度しか得られないためである.しかし,この挙動はすでに解析されていること,また,ACモータを制御するロータリエンコーダの分解能が飛躍的に向上していることから,ころがり要素の非線形特性を考慮した制御系が設計できれば,微動機構を用いることなく一つの機構で数十nmの精度と数十mmのストロークとを持つ送り駆動系が実現できるのではないかという着想に至った. はじめに市販のACサーボモータ単体の微小回転時の挙動を調べた結果,直線変位に換算して50μmのステップ応答では問題なく運動した比例ゲインを用いて0.5μm程度の微小変位を行うと運動せず,微小変位時にはゲインを高くしないと運動できないことが確認できた.なお,定常的に5〜6パルスの幅で振動が生じてしまっている. ACサーボモータと送り駆動機構とを接続して微小回転させた結果,モータ単体で見られた5〜6パルスの定常的な振動が1〜2パルスに低減した.これは直動部分の摩擦の効果と考えられる.本研究で用いた送り駆動系では,通常のPI補償で0.1μmの微小変位が制御できる場合があるが再現性は得られていない.研究期間の途中で異動があり進行が遅れているが,再現性が得られるような補償法を提案し実験で検証しているところである.この結果は随時報告して行く予定である.
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