研究概要 |
気泡挙動の正確な予測は,工業的には沸騰流の解析で特に重要となる.しかしながら,実験遂行上の理由により,既存の実験は主に水・空気などの非沸騰系二相流を用いて行われ,これを沸騰流に拡張して用いるという手法が用いられてきた.しかしながら,非沸騰系二相流と実際の沸騰流では,流体の物性値や気泡の形成過程を初めとして相違点が多い.そこで,本研究では、沸騰系二相流中の気泡の振る舞いについて2台の高速度ビデオカメラを用いたステレオ撮影により詳細に検討した.得られた主な成果を以下に示す.(1)無次元粘性を表すモルトン数の小さい高温静止水中において,単一気泡の上昇速度および揺動運動の様子を検討した.この結果,気泡上昇速度は既存の相関式による予測値よりも遅い値となること,揺動開始条件および揺動周期は既存の相関式により概ね予測可能であることを見出した.さらに,揺動振幅を予測するための新たな相関式を開発した.(2)強制対流鉛直円管内上昇乱流中において,平衡に達した状態での単一気泡の径方向分布を調べた.この結果,これまで5mm程度よりも小さい気泡は管壁近くを,これよりも大きい気泡は管中央に存在しやすいとの知見が主流であったが,1mm程度よりも小さい気泡はむしろ管中央に存在しやすいことが明らかとなった.詳細二相流モデルを用いた解析を実施するとともに本実験データと比較し,気泡サイズが1mm程度よりも小さい場合には,気液界面で径方向に作用する力について新たなモデル化必要となることを示した.(3)鉛直円管内強制対流中において,加熱面を離脱する蒸気泡の挙動を調べた.この結果,発泡点離脱後の気泡の軌跡は,壁面に沿い上昇するもの,壁面上をバウンドしつつ上昇するもの,壁面から遠ざかりつつ上昇するものの3種類に分類できることがわかった.また,液中の乱れの影響により確率的な要素を含むが,発泡点離脱後の気泡の軌跡は,一義的には発泡点離脱時気泡径と液流速により決定されることを示した.本現象についても詳細二相流モデルに基づく解析を実施し,気泡軌跡の傾向は,既存の気泡力学に基づく知見により定性的には説明可能であることを示した.
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