研究概要 |
今年度は,昨年度製作したスピンコーティング実験装置により,熱線流速計により排気流量を変化させてウェーハ上の気流を詳細に計測した.回転数は3000rpmに固定し,排気流量を0.0〜3.0m^3/minと変化させて,ウェーハの回転と同期した計測を行った. その結果,昨年度油膜法による可視化実験で観察されたエクマンスパイラルがウェーハ上に約31本の等高線の筋として観察された.昨年度の可視化実験では,排気流量による差異はほとんど見られなかったが,今年度の実験では,排気流量による差異がはっきりと現れた.排気流量の増加とともに,エクマンスパイラルが発生し始める半径位置,つまり臨界レイノルズ数が増加することが確認された.しかしながら,ウェーハ上の境界層が乱流に遷移する半径位置,つまり遷移レイノルズ数はさほど変化は見られなかった.また,排気流量の増加に伴い,エクマン螺旋に相当する等高線の輪郭がはっきりと観察された. 高さ方向に詳細に計測した結果,高さ方向でエクマンスパイラルの存在位置が異なることが観察され,このエクマンスパイラルが三次元的な構造を持つことが示唆された.ウェーハよりかなり上方では,流れはウェーハ外縁の局所的な領域に集中することが分かった. 今回の計測では,ウェーハの回転と同期しているType-Iのエクマンスパイラルを観察することができ,これがウエーハ上の境界層の乱流遷移に大きく関与していることが分かった.しかしながら,今回の計測ではウェーハの回転と同期しないType-IIのエクマンスパイラルは観察されておらず,このことは今後の課題である.
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