研究概要 |
ある種の界面活性剤は管内乱流において抵抗減少効果を示す。その抵抗減少効果は最大で約80%にもなり、しかも抵抗減少効果に関連しているとされる紐状ミセルは流れ場中のせん断により破壊されても可逆的に再生するため、抵抗減少効果が消失することはない。よって、界面活性剤水溶液を地域冷暖房などの循環系の熱媒体として使用することでポンプ動力の大幅な低減が期待できる。これら抵抗減少効果の実用化は進みつつあるが、そのメカニズムや複雑な粘弾性的挙動および流動様相に関して不明な点は多い。一方、外部流である円柱周りの流れや平板上境界層流れの界面活性剤水溶液に関する研究は少ない。このことは界面活性剤水溶液の発泡性や物性の温度依存性などによる実験上の困難さに起因すると考えられる。本研究の目的は界面活性剤水溶液が円柱周りの流れおよび平板上境界層流れに及ぼす影響を実験的・解析的に明らかにすることである。 本年度の研究で以下の2つの問題が明らかにされた。 (1)1,000<Re<7,000の領域において界面活性剤水溶液中の円柱の抗力測定、流れの可視化、数値シミュレーションを行った。その結果、1,000<Re<3,000の領域で界面活性剤水溶液中の円柱抗力は水の場合と比較し増加することが明らかとなった。そして、円柱直径が20mmの場合レイノルズ数が3000を越えると抵抗減少が生じ始める。また、抵抗が増加している領域では円柱周辺に広いよどみ領域が発生し、抗力が減少する領域では円柱後流幅が非常に狭くなることが判った. (2)界面活性剤水溶液中の平板上境界層内の速度分布を114000<Re<445000の領域で測定した。その結果、界面活性剤水溶液では層流域での境界層厚さが非常に厚くなること、抗力係数が増加することが明らかになった。また、界面活性剤水溶液の形状係数のレイノルズ数に対する変化は水道水と比較して非常に小さいことが判った。
|