研究概要 |
適合直交格子法は,数値流体解析を実用化する上でボトルネックとなる計算格子生成をほぼ自動化できる手法として注目されている.本研究は,適合直交格子の管理に最も効率がよい反面,流体解析手法として例が少ないツリー型データ構造を用いて適合直交格子による流体解析手法を開発し,従来の流体解析アルゴリズムや並列化手法がツリー型データによる手法にも適用可能かどうか検討した.また,ツリー型データの特徴を活かし,CADデータから格子を自動的かつ高速に生成するための基礎的な手法の開発も行った. まず,基本となる流体解析手法をセル中心有限体積手法を元に開発した.このとき,再分割された格子を一まとめにして管理することによってデータ管理のためのメモリオーバーヘッドを節約することが可能となる.本研究ではデータ管理用のメモリは一格子あたり高々数ワードに抑えることが可能となった.また,ツリー型データ構造のもつ規則性を利用することにより,従来の構造格子用に開発された各種流体解析アルゴリズムが大きな変更なく適用できることが明らかになった.特に,再分割後に非常に細かい格子が現れた場合に重要となる陰解法が,簡単な格子オーダーリングによって実現可能となることがわかった. 次に,固体壁面に形成される境界層を捉えるために,格子分割を特定の軸方向にのみ行う非等方格子分割へ拡張を行った.この拡張は単に分割方向を示すフラグを追加するのみで実現可能であり,また,先述の陰解法などもそのまま適用可能である.(ASME/JSME Joint Fluids Engineering Conference (2003)にて発表) さらに,開発した手法の並列化も行った.並列化まずデータをプロセッサごとに分割するデータパラレル方式をとった.領域分割にはPeano曲線によってプロセッサ間の負荷を均衡させ,それに基づいてツリー型データ自体を分離して各プロセッサで管理するようにした.並列化効率をPCクラスタ上で検証したところ,8プロセッサで80%程度の効率となった.現時点では満足できる効率ではないが,プログラム自体にチューニングの余地がまだ残されていると思われる.(Parallel CFD 2002にて発表) ツリー型データを利用して格子生成手法の開発も行った.適合直交格子では格子を物体との交差点を算出することによって生成するため,物体境界面と格子線との高速な交差判定を行う必要がある.本研究ではCGの技法を活用した交差判定アルゴリズムを開発した.実際にそのアルゴリズムを検証した結果,数百万格子の交差判定をPCで僅か数秒で処理できることを確認した.(日本機械学会論文集B編に掲載)
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