研究概要 |
1.主流乱れ発生装置の改良 低乱風洞の測定部上流に,主流乱れ生成のための乱流格子を取り付けた。昨年度使用した静的格子とは異なり,格子の上流側に設置された穴から上流に向かって吹き出す噴流による動的格子を新たに作成した。本研究で開発された動的乱流発生装置によれば,噴流の強さを調整することで主流乱れ強さを容易に制御でき,最大で約2%まで上昇させることが可能である。また,主流乱れのスケールは境界層厚さの0.6倍から1.5倍まで変化することが確かめられた。 2.主流乱れを伴う乱流温度境界層の風洞実験 生成した主流乱れが,零圧力こう配及び逆圧力こう配を伴う乱流温度境界層にどのような影響を与えるかについて熱線流速計と抵抗線温度計を用いて詳細に調べた。まず,速度場について,主流乱れを付加した場合,平均速度分布は主流速度に早く近づき,後流成分は低下する。乱れ強さは外層で増加するものの,内層での影響はほとんど認められない。この傾向は,圧力こう配の有無によらず認められた。一方,温度場については,主流乱れの影響により平均温度分布が主流温度に早く近づくものの,圧力こう配の影響による差異はほとんど認められなかった。取得された波形データを基に,スペクトル解析およびウェーブレット解析を行った結果,スケールの大きな主流乱れとバースティング現象による小スケールの乱流変動が強く干渉していることが明らかとなった。 3.実験データベースの整理 取得された主流乱れを伴う乱流温度境界層の実験データベースを整理し,インターネットにより国内外に公開した。今後,このデータベースは乱流数理モデルの性能評価および改善(ERCOFTAC)に資される。
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