研究概要 |
本年度交付申請書における研究実施計画では,振動系の位置決め制御問題を例に,非定常最適レギュレータの計算によるオフライン目標軌道設計の効率化が目標とされた.そして,制御器設計パラメータのチューニングにGA(遺伝的アルゴリズム)を適用することを考えていた.研究の遂行を通じて,本問題に対しては従来の非定常最適レギュレータにGAを組み合わせる当初のアイデアよりも,制御器導出に必要な時変Riccati方程式を従来の逆の時間方向に解く新しい非定常制御手法とランダムサーチによるパラメータチューニングを組み合わせるほうが効率的な制御器設計法となることがわかった.この内容は,電気学会論文誌(産業応用部門誌)に投稿中である. 一方,パワーアシスト制御問題など他の運動制御問題に対する,シミュレーションベースによる目標軌道設計に基づいた運動制御手法の確立も本年度の課題であった.そのため,自走台車のパワーアシスト制御問題を取り上げた.そして,自動搬送制御モードからパワーアシストをともなう手動位置決めモードになめらかに切り換わる制御手法,ならびにオンラインシミュレータによる目標軌道生成とスライディングモード制御を組み合わせるロバストなパワーアシスト制御手法などを提案した.特に後者は,最近需要が増しているパワーアシスト機器の制御問題に対し,本研究課題が主張するシミュレーションベースによる目標軌道設計を導入し,有効性を確認したことでその意義は大きい.これらの内容はすでに日本機械学会論文集C編に発表されている. 以上2年度間を通じ,本研究課題が目指す運動制御の方法論に関する基礎的な知見が明らかにされた.今後,本研究課題で扱った非定常的な制御手法について,複数の異なる制御モードを統一的に扱う方法論などを中心に研究を行う予定であるが,その際にも,本研究課題で得られた知見を十分に活用できるものと考えている.
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