研究概要 |
昨年度は,本研究課題の主要要素である10個の流出口の切換えができるロータリー型マイクロ多方向切換バルブにおいて,アクチュエータにより流出口を自動で切換えるための原理を考案し,試作・駆動実験を行うことで有効性を示した.そこで次のステップとして,本バルブチップにマイクロアクチュエータを内蔵させ流路の自動切換えを実現するために,バルブの性能と設計パラメータの関係を計測し明らかにした.これにより,500kPa以上の高耐圧性能にもかかわらず,約60gfと低い摺動力でローターを回転させられる条件を発見でき,現状の性能を維持したままで内蔵したマイクロアクチュエータによりローターを回転させられることが確認できた. また,気体液体双方の輸送ができるSMAマイクロアクチュエータを用いたマイクロポンプチップの試作も行った.研究代表者らが2001年に試作したマイクロポンプの性能(液体:最大流量12.3μl/min,最大圧力25kPa;気体=最大流量11.0μl/min,最大圧力5kPa)より高いものを作製するため,変位可能なチャンバー兼バイアス力として利用している材料から選定をやり直し,それに合わせSMAマイクロアクチュエータを設計製作したが,マイクロポンプの性能を大幅に上げるまでには至らなかった.しかし,マイクロポンプの開発の過程で,歩留まりが良く高性能な新しいハット型チェックバルブを考案した.これまで利用していたシリコンラバーを片持ちにハイブリッドした片持型チェックバルブはマイクロポンプのように低い流速で開閉を行うと液漏れし正常に動作しないことが多々あった.また,開放時には弁が振動しポンプ性能に悪影響を及ぼしていた.これはマイクロ光造形法の造形原理に起因していることが分かり,抜本的解決が必要であった.そこで,シリコンラバー自体が受動弁として機能するハット型の3次元形状を考案した.これは,歩留まりが良いばかりか,低い流速においても常に正常に動作し,開放時の圧力が0.3kPaとこれまでのものの3分の1程度と低く,さらに閉鎖時の圧力は250kPa以上と良好な性能を示した.
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