研究概要 |
本研究では,太陽光発電システム(PVシステム)における急激な出力変動を、蓄電池等を用いるのではなく、最大出力点制御(以下,MPPT)の制御特性の調整によって緩和することに着目し、その有用性について技術的および経済的観点から検討を行った。その結果、以下の知見が得られた。 ◆名古屋市域5ヶ所で観測した日射量データを用いて、提案手法を適用した場合のPVシステム群全体の出力を推定し負の需要とみなし、提案手法の適用が電力系統の運用に与える影響について検討した。その結果、提案手法によってPVシステムの出力増加速度の上限を1%/minに設定すれば,PVシステム導入率が5%になっても、現状のLFC発電機容量を増加させる必要がないことがわかった。また、このような効果により、PVシステムの系統電源に対する代替性(kW価値)が高く評価されることを確認した。 ◆提案手法を適用すると,日射から変換できる電力が減少するため、PVシステムの経済性を悪化させる。そこで,経済性の観点から,提案手法と一般的に考えられている蓄電池による出力平準化手法との比較を行った。その結果、鉛蓄電池の寿命サイクル数が現状の500回前後であれば、提案手法の平準化コストは鉛蓄電池を用いる場合の4分の1程度であり、鉛蓄電池の寿命サイクル数が将来目標の3000回になっても、提案手法の平準化コストと同程度であることがわかった。 ◆PVモジュールの短絡電流をサンプリング間隔1秒で観測して等価的に日射量の変動特性とみなし、短時間の日射変動が、提案しているPVシステムの出力変動緩和方法に与える影響について検討を行った結果、検討対象期間の大部分の日については、サンプリング間隔60秒のデータセットを用いた場合でも出力変動特性や積算電力量を適切に評価できることを確認した。 ◆サンプリング間隔60秒のデータセットでは考慮されない数秒間の出力低下について出力変動速度の制限をなくすよう改良したところ、提案MPPT適用によるLFCの時間領域における出力平準化効果を維持しつつ、積算電力量の減少が改善された。
|