研究概要 |
本研究では,ディーゼルエンジンから排出される窒素酸化物を選択接触還元法により除去する際,還元触媒の機能向上を意図し,気体放電を用いたプラズマ化学反応によって導入ガスの前処理を行なう。実験やシミュレーションによる放電部の反応,および,系全体が効率良く機能するシステムについて検討している。平成15年度の課題,及び,成果は以下の通りである。 1.放電プラズマ部の酸化効率改善 大容量排気ガスに対応可能なシステムとして,バリア放電型の装置を採用した。導入ガスの組成,投入電力をパラメータとして,放電プラズマによる窒素酸化物の酸化効率を定量的に評価した。 2.反応過程の検証 還元剤として炭化水素(エチレン)を添加した際の反応過程を実験とシミュレーションを併用して調査した。 (1)フーリエ変換赤外分光光度計を用い,放電部通過の前後,および,触媒層通過の前後でのガス組成を調査し,以下の知見を得た。(1)放電部通過後にホルムアルデヒドと蟻酸が主な副生成物として観測された。(2)触媒層通過後に窒素酸化物の還元除去,添加した炭化水素の減少,ホルムアルデヒドや蟻酸の消失,二酸化炭素と水の生成を確認した。放電による前処理の有無により,炭化水素減少量に差があり,放電の機能が確認された。 (2)レーザ誘起蛍光法を用いて放電内部のOHラジカルを計測し,その経時変化からOHラジカルの絶対密度推定法を提案した。また,この結果を用い,各種放電条件でのOHラジカル密度の推定を行った。 (3)文献やデータベースを調査した上で,180種の分子と約700種の反応を考慮したレート方程式による反応解析プログラムを作成し,実験と同条件での反応過程の解析を行った。 なお,当初,還元触媒とプラズマ化学反応の最適配置検討を課題として挙げていた。しかし,使用した触媒(銅ゼオライト,Cu-ZSM5)で機能が十分に得られず,この検討は今後の課題として残った。
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