絶縁性基板(SiO2/Si)の表面に電子ビームリソグラフィーとリフトオフによって微小な金属電極を形成し、電圧を印加することにより局所電界を発生させた。有機溶媒に超音波分散したカーボンナノチューブはその局所電界によって微小電極の先端付近に集まることが分かった。様々な有機溶媒の種類と温度、印加電圧の大きさを変えて実験してみたところ、シングルウォールのカーボンナノチューブをジクロロメタンに分散した分散液を摂氏50度の基板に滴下したときに、2つの微小電極(距離約1μm)を橋渡しするようにナノチューブを固定することができた。この現象を利用すれば、位置を制御してナノチューブデバイスを作製することができ、新しいナノチューブデバイスの作製手法として期待できる。また、この現象は電界の方向ではなくて、電界の強さによってナノチューブが力を受けていることを示しており、誘電泳動が起こっていると考えられる。しかし、電極の先端から離れた大きな部分では、電界の方向(極性)によってナノチューブが移動している現象も観られており、電界の極性によって移動がおこる電気泳動も同時に起こっていることが分かった。上述の手法で作製されたナノチューブデバイスの電気伝導特性を測定してみたところ、室温では数十kΩから1MΩ程度となった。接触抵抗を下げる工夫をするのが今後の課題である。さらに、始めに4つ(2対)の微小電極を作製しておき、1対づつに電圧を印可しながらナノチューブを固定する実験をしてみたところ、ナノチューブを十字型に配置することに成功した。十字型ナノチューブは新しい電子デバイスとしての応用も期待でき、非常に興味深い。
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