研究概要 |
本課題研究では、ダイヤモンド電子デバイス実現において最も重要な課題である、(i)高品質ダイヤモンドの高速合成、及び(ii)n型ダイヤモンド薄膜合成に焦点を合わせて研究を進めた。 その結果、前者の研究においては、高温・高密度プラズマを適用することが非常に有効であることを見いだした[研究業績1,3]。続いて、この高速合成された薄膜に対して電子線やレーザ光を照射し、励起されたキャリヤの拡散長等を評価したところ、得られた薄膜中でのキャリヤの拡散長が10μm以上と従来ダイヤモンド薄膜と比べて非常に長いことが分かった[研究業績1,3,4]。 また後者においては、非特殊高圧ガスを用いて作製したタイヤモンド(111)薄膜のHall測定において、世界で始めて明確なn型特性を観測し、また幾つかの新たな重要な知見を得た[論文投稿中]。石英製反応容器を持つCVD装置を用いた場合、水素プラズマに対する石英の耐性が低いため、Siの膜中への混入だけでなく、プラズマエッチングに伴って発生した酸素が成長機構に大きな影響を与え、薄膜の品質を大きく左右することが明らかになった。合成時においては、プラズマが石英製の反応容器及びホルダーに接している。特に高温・高密度プラズマを用いたときはこれが顕著となるため、高温・高密度プラズマを適用するためには、反応容器やホルダー部を金属製に変更することが不可欠であろう。一方、ドーピングガスについては、非特殊高圧ガスであるトリメチルフォスフィンP(CH_3)_3を用いると、リンの取り込み率が約2桁も改善することを発見した。この特徴を生かすことにより、取り込み率が非常に小さい(100)薄膜にもリンを効果的にドープできると予想される。残念ながら、本研究期間中に、比較的平坦はリンドープ(100)薄膜を作製することはできたが、これらから明確なn型を観測することができなかった。他の半導体デバイスを圧倒する高性能ダイヤモンド電子デバイスの実現には高品質n型(100)薄膜の作製が急務である。 本研究では更に、この手法により得た高濃度n型ダイヤモンド層を、申請者らが独自に開発した選択成長技術と組み合わせることにより、n型ダイヤモンドへのオーミック電極の形成に成功した[研究業績2]。今後のn型ダイヤモンド研究に不可欠な技術となろう。
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