研究概要 |
近年、エレクトロニクスの分野で実用化されている鉛系ペロヴスカイト型強誘電体の性能に匹敵する、環境に優しい非鉛系材料の研究開発が必要不可欠と考えられている。本研究では非鉛系材料であるビスマス層状構造強誘電体(BLSF)の圧電材料への展開を目的にしている。 本年度では、本報告者が見出した新規化合物Na_<0.5>Bi_<2.5>Ta_2O_9(NBT)、不揮発性メモリ材料として注目され圧電特性も期待できるSrBi_2Ta_2O_9(SBT)を中心に、それらのセラミックスを作製し、その電気的特性の評価を行った。また、それらの固溶体であるNBT-SBTについても同様に研究を行った。NBTにおいては、Mnをドープしたセラミックスで考えられうる全ての振動モードでの電気機械結合係数を求めることができた。その値は同構造をもつ他のBLSFと比較すると最大の値を示し、機械的品質係数Q_mに関してもBLSF特有の大きな値を示すことがわかった。また、SBTにおいては大きなk_<ij>とQ_mが得られる組成を探索するため、出発組成を変化させてセラミックスを作製し、その圧電特性について調べた。その結果、Sr_<1-x>Bi_<2+x>Ta_2O_9(x=0.2)とした不定比組成付近で圧電特性が最良となるように変化しており、その組成におけるk_<ij>は同構造のBLSFと比較しても大きな値を示した(k_p=10.6%、k_<33>=14.0%)。さらに、優れた電気特性が見出されたNBT、不定比組成SBT両者の固溶体を形成させることで更に良好な特性をもつ化合物が得られると考え、(1-x)NBT-(x)SBT固溶体セラミックスの作製と評価を行った。その結果、x=0.75とした試料において最も大きな械結合係数k_p、品質係数Q_m(k_p)が得られた。その値はk_p=8.6%,Q_m=7000となり、ベースマテリアルであるx=0(NBT)のk_p=6.6%,Q_m=5600、x=1.0(SBT)のk_p=8.1%, Q_m=6300と比べて大きくなることがわかった。本研究で見出したBLSFは高温・高周波用圧電体素子への応用が期待できることが分かった。
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