研究概要 |
理工学の様々の分野に幅広く存在する,結合カオス振動子を解析するための新しい信号処理技術を開発することが近年,急務の課題となっている.本年度は,研究代表者がこれまでに開発してきた「非線形予測子パラメータ族によるカオス時系列の解析手法」を結合カオス振動子に応用し,時系列の背後に存在するカオス振動子の結合強度等の特徴パラメータを推定する手法を開発することを目指して,以下の研究を行った. 1)基本アルゴリズムの開発: 二つのカオス振動子,あるいは,一つのカオス振動子と正弦波発生器が結合したシステムに対して,各振動子の時系列信号が同時計測される場合を想定した.分岐係数値の異なる条件下で計測された数組の時系列データから,背後に存在する結合強度係数および非一様性係数を逆推定し,係数族を解析することによって,同期・非同期の存在領域を予測するアルゴリズムを開発した.結合レスラーモデルおよび共振型船舶振動モデルに対して,アルゴリズムの有効性を確認した. 2)脳神経系データへの応用: 1)で開発したアルゴリズムをロブスターの生理ニューロンデータに応用した.実データをヒンズ・マシュローズ方程式モデルに単方向結合して,モデル係数の推定を行なったところ,定性的に実データを良く再現するモデルを獲得することができた.ロブスターの解析実験は,研究代表者がカリフォルニア大学サンディエゴ校の非線形科学研究所に短期滞在し,アバーバネル教授と共同研究することによって行った.
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