| 研究概要 |
近年,ディジタルコンテンツの流通量の飛躍的な増大に伴い,劣化のない複製や,証処の残らないデータ改ざんが大きな問題となってきており,有効な著作権保護策として電子透かし技術が注目を集めている.
本研究では,周波数特性利用型電子透かしを用いた画像コンテンツの著作権保護方式について検討を行っている.従来の周波数特性利用型電子透かしは,無攻撃時でも透かしが正しく抽出されない場合があったが,本研究ではこの原因を明らかにした.また,透かし合成画像の画像領域における変化量を考慮し,無攻撃時には透かしが正しく抽出でき,攻撃に対しても耐性を持つ電子透かし方式の開発を行っている.また,原画像や原透かし情報を用いずに画像の改ざんを検知する方式についても検討を行っている.
第二年度目である本年度は,前年度に開発した電子透かし方式,すなわち,ウェーブレット変換により得られる隣接する変換係数をベクトルとして扱い,このベクトルに含まれる係数の大小関係のパターンを透かし情報に応じて変更することで透かしを埋め込む方式の性能評価および改良を行った.本方式は画像処理に耐性のある電子透かし方式であるが,同時に改ざんの検知も可能である.提案方式では,3個のウェーブレット係数の大小関係を用いて1ビットの透かし情報を埋め込む.このとき,透かしの割り当てられていない大小関係が存在することを利用し,これを用いて改ざん検知を行う.
検討の結果,本方式は,フィルタリングなどの画像処理およびJPEG圧縮に耐性があり,かつ,改ざんの検知も可能であることが明らかとなった.また,画像の切抜き処理に対すや対処法の検討や,ディジタルミュージアム画像への電子透かし埋め込みについての検討も行った.
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