研究概要 |
「世界最高速かつ最も安全な」という研究課題で2年間研究を行った.その研究方針としては大きく2つに分け,一つは最も安全ということ,もう一つは最高速ということである.まず前者に関しては,素数位数の楕円曲線が最も安全であり,かつベースポイントと呼ばれる有理点の生成上,最も暗号に使い勝手が良いということで,その高速かつ組織的な生成法を提案してきた.それは,既約多項式判定に加えて,ツイストと呼ばれる操作を用いた方法であり,そのアイデアに新規性があるということで,本書類11.の1,2番目に挙げている国際学会において研究発表し,現在これを論文執筆中である.そして,後者の高速実装に関しては,高速であることと,コンパクトであることを重視した.高速であることに関する成果は,本書類11.の5番目の論文である.これまでOEFと呼ばれる有限体(拡大体)が,最も演算が高速であるとされてきたが,我々の研究成果により,乗算で1,2割,逆元算出で3,4割程度の更なる高速化が行えた.そして,プログラムサイズについても,OEFと比べて非常にコンパクトである.この我々の提案法は既約All-One Polynomialを法多項式とすることから,AOPFと呼んでいるが,これを構成するためには拡大次数が偶数でなければならないという条件があった.これでは,AOPFにおける演算が高速であるとは言っても,任意の拡大体を構成できないということで問題となる.これを解決する手法が,本書類11.の6番目の研究発表であり,これにより奇数次数,素数次数の拡大体を,AOPFの高速な演算を継承しながら構成できるようになった.今回の研究により,とくに高速実装に関して,非常に大きな成果が得られた.具体的には,実験はクロック20MHz,32ビットのマイコン上で行っており,このマイコンにコンパクトに実装でき,数百ミリ秒程度で(素数位数の)楕円曲線暗号の暗号化/復号を行えている.
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