研究概要 |
平成15年度はOFDMシステムにおける周波数同期システムに関する検討を行った.昨年度は,信号の振幅差を利用するシンボル同期システムの検討を行ったが,同システムは,シンボルタイミングの検出だけでなく,その原理からシンボル中で遅延波の影響を受けていない範囲を検出できることを明らかにした.一般に,OFDMシステムでは,時間領域で相関操作を行うことで比較的高精度な周波数同期が得られる.しかし,遅延波の影響を受けているシンボル長全体に渡って相関操作を行うと,相関範囲に含まれる遅延波成分の影響で誤差を生じることが問題となる. そこで,本研究ではまず相関範囲をシンボル長全体に渡らずにすむように一シンボルの中で同一の波形が繰り返し現れる繰り返し波形を持つシンボルに対して同期を行うことを考える.このようなシンボルは無線LANシステムなどで実際に利用されるものである.繰り返し波形を持つシンボルを用いることで,相関操作の範囲を繰り返し単位で任意に設定できるようになる.そこで,その相関範囲を決定するために,昨年度検討したシンボル同期システムを若干変更し,周波数同期に最適な相関範囲を決定するシステムとしても用いる.遅延波の影響を受けない範囲で相関操作が行えるようになることにより,従来より高い精度で周波数精度が確立できる.以上の方式の有効性を理論解析および計算機シミュレーションを用いて検証し,周波数誤差を精度よく検出できることを確認した. ところで,このような高精度な同期システムを用いても,雑音等の影響により誤差を0にすることは不可能である.そこで無線LANシステムなどでは,同期システム後に残留する周波数誤差成分をさらに補正するために,位相追跡システムが用いられるのが普通である.ところが,この位相追跡は残留する誤差成分とそれにより生じるキャリア間干渉の成分を分離して扱うことができない.さらに,発信器の位相雑音の影響も加わり,追跡性能には限界がある.そこで本研究では最後に,OFDMシステムにおける位相追跡システムに関する検討も行った.本システムでは,周波数領域で推定した残留誤差を時間領域で補正するシステム構造をとるため,残留成分とキャリア間干渉を分離して補正することが可能になる.シミュレーションより非常に高精度な位相追跡が行えることを確認した.
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