研究概要 |
純粋状態から成る量子信号に古典雑音が混入した場合,信号量子状態は混合状態となる.その混合状態信号は量子力学的性質と古典力学的性質を併せ持つ.そのため,古典通信路では見られず,量子通信路固有の特徴である「超加法性」が混合状態信号に対してはどのような振る舞いをするのかを解明することが本研究の目的であった.しかし混合状態の信号検出過程を最適化することは純粋状態のそれと比較して非常に複雑になるため,混合状態信号の中でも解析が最も容易である2次元ヒルベルト空間上の2元対称信号を研究対象とした.具体的には,混合状態で表される信号を2次拡大(符号長2),3次拡大(符号長3)した場合に超加法性が存在するかどうかを調査した.昨年度には第一段階として,超加法性の有無を判断する基準である「符号化無し最大相互情報量」の導出を行い,数値解析によって充分に信頼できる値を得た.そして本年度は昨年の結果を基に2次拡大,3次拡大の信号系を混合状態信号で構成し,超加法性が存在するかどうかの検証を行った.その結果,古典雑音の混入が僅かであれば超加法性が存在することが確認できた.しかし,古典雑音の混入が進むに従って超加法性の量は急速に減少し,最終的には符号化無し最大相互情報量を下回ってしまうことを明らかにした.
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