研究概要 |
動力を伴う工場や船舶機関室内では,信号よりも雑音の方が大きい低SNR環境における作業が要求される。これに伴い雑音に頑健な認識システムの早急の開発が必要となり,本研究では雑音に有効的なシステムの開発をこれまでに試みてきた.抽出信号の対象として一般的に用いられる音声信号の場合では外乱の影響が顕著であることから,加速度検出器を上唇上部に直接密着させて信号抽出を行う体内伝導音を用いることで,雑音の影響を回避可能なシステムの構築を実現した. 音声と体内伝導音の違いについて心理実験及びメルケプストラムでの比較も行い子音に対しても信号抽出が実現できることを確認している.また,認識語彙を従来の単語レベルから連続発声文章とし検討を行うことでシステムの有効性も示した.更に,体内伝導音を音声と比較した場合に信号伝搬時に高域周波数が減衰する問題を,LMSアルゴリズムによる適応フィルタと体内伝導音を畳み込む手法と,クロススペクトル法により求めた伝達関数と体内伝導音を畳み込む手法で,広域周波数における振幅特性の減衰を抑えることも可能にした. 実環境でこのシステムを用いる場合,認識システムを設置する作業員は動作を行いながら利用することが考えられ,雑音以外の振動外乱に対しても有効的でなければならない.よって歩行や首振動作中の振動外乱の影響についても検討し認識実験を試みた.その結果,致命的な認識率の低下は見られなかったが,幾つかの外乱パターンが存在している事が確認できた.この動作項目による外乱パターンの抽出と,それに対するサブトラクション法の検討を行うことで認識率の向上へ繋がるシステムが期待できる.動作外乱での検討では,より認識が困難とされる英語の連続発声文章における認識率の検討も行い,日本語との比較を行ったがそれほど認識率に影響がないことが確認できた.
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