研究概要 |
本研究の目的は,非常に小さな体長でありながら優れた音源定位能力をもつヤドリバエの聴覚器官に着目し、この構造を適切にモデル化、一般化した新しいセンサ構造を導入することにより,従来のマイクロフォンアレイ技術では困難な超小型音源定位センサの実現を目指すものである。昨年度は新たな音源定位センサ構造としてジンバル型振動板を提案し,リン青銅箔を用いた試作センサによりその原理を確認し、また半導体微細加工によるセンサの設計を行なった。これをうけた本年度の成果は以下の通りである。 1)半導体微細加工によるセンサの試作とその評価 昨年度、A)表面マイクロマシニング、B)Niの無電解メッキ、の2つのプロセスを想定して設計した静電容量型のセンサを試作し、評価を行なった。どちらのプロセスでも今回の試作では成功には至らなかったが、エッチングで構造をリリースする点に問題があることを確認し、これをクリアするために1)背面に音響孔をあけた構造、2)エッチング方法の改善、等、次の試作への検討を行なった。 2)超小型音源分離センサシステムの理論の構築と実験 本研究で提案するセンサは、原理的に高い時間分解能で音源位置の定位が可能である。これを、近年音響の分野で活発に研究が行なわれている音源分離への応用を行なった。具体的には、音源位置情報を既知とした条件での音源分離のアルゴリズムを新たに構築し、1)音源が有限距離(無限遠とはみなせない)の場合を含む最適分離フィルタの導出、2)原理的に分離が不可能となる周波数とアイクロフォンアレイの関係の導出、を行なった。また予備実験として、2×2の小型マイクロフォンアレイを用い、実環境でも音源信号が分離されることを確認した。
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