研究概要 |
本年度は,(1)ポーリング制御による符号化アレイ超音波トランスデューサの開発,(2)超音波非線形性測定用高分子超音波トランスデューサの開発,(3)エッジ波抑制型高分子超音波トランスデューサの開発,を主な項目として研究を行った.以下に,得られた研究成果について述べる. (1)昨年度の成果をふまえて単一の高分子圧電膜に31bit長のM系列で重み付け可能な符号化超音波アレイトランスデューサを作製した.これにより,膜内の双極子の方向分布のみで音響波を空間的に変調することが可能となった.しかも信号線は1本のみであり,大幅なシステムの簡略化が可能であることを見いだした.また,走査することなくワンショット・アクションによる2Dもしくは3D超音波撮像の可能性を実証した. (2)超音波の非線形性測定よって,これまで探傷が困難であった閉口亀裂の評価を提案した.そして,非線形測定に適した超音波探触子を高分子膜で開発することを試みた.高分子圧電膜を積層し,送信時と受信時でアクティブな圧電膜の厚さを変えることにより,超音波探触子自身の周波数特性を制御する方法を考案した.これにより,基本波成分と二次高調波成分を効率よく測定することが可能となり,非線形性の測定感度と定量性が向上した. (3)これまで,電極を漏洩レイリー波用と直接反射波用とに分割することにより,互いに干渉することなく漏洩レイリー波の音速を高精度に測定する集束超音波トランスデューサを開発してきた.しかしながら,有限な開口の端部から放射されるエッジ波が漏洩レイリー波の音速測定の精度に影響を及ぼしていることが明らかとなった.そこで,エッジ波の指向性を制御することで,その影響を低減することを考案し,そのように働く開口形状を持つ超音波集束トランスデューサを開発した.これにより,更なる高精度な漏洩レイリー波の音速測定が可能となった.
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