研究概要 |
本研究では,逆散乱問題の再構成メカニズムの解明および有効な新規再構成法の開発を目指し,作用素を構成するという立場から逆散乱問題の本質的な性質を検討している.本年度の研究実施計画は,(1)導出した反復法の性質の継続した検討,(2)複数の周波数の電磁波で物体が照射される問題に対する拡張,(3)散乱波の観測方法と得られる観測作用素の展開係数の精度に関する検討,(4)得られた成果の国内外の会議・研究会での公表,であった. (1)について,これまで,単一周波数を用いて物体を推定する逆散乱問題に対し,再構成領域の形状を円形としてある関数系で観測作用素を展開することで,非放射成分と放射成分を分離し,非放射成分と物体とを交互に線形最小二乗法により最適化する手法を導出し,軸対称物体に適用してその性質を検討してきているが,平成16年度は,非軸対称(2次元構造をもつ)物体の再構成問題へ適用するために必要な拡張を行い,その数値例を示した.本手順は,物体から散乱波を計算する順問題を解かず,非線形最適化手法を用いない,他の正則化法を組み込んでいない特徴がある. (2)については,残る検討事項となった. (3)については,観測散乱波に雑音が含まれる場合を設定して物体の再構城を試みた.観測データは,フーリエ変換により,入射波と散乱波の関係を示すTマトリックスで表現され,それより,雑音に埋もれない有効な観測量を抽出できる.この有効な観測量のみを再構成に使用できるように,物体および観測作用素を表現するパラメータ数を限定することで,観測データに雑音が含まれる場合でも,安定して少ない反復回数で精度よい物体の再構成結果が得られることを示した. (4)について,成果を国内外の国際会議,研究会で公表した.
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