研究概要 |
本研究の目的は,時間-周波数解析を導入して筋音図(mechanomyogram ; MMG)の連続的な変化を解析し,運動単位活動様式の経時的変化の記述を試みることであった.また,本申請の期間内では,特に筋疲労を伴う持続収縮時の筋音図を対象に,筋音図を筋疲労の評価指標にするにあたって提案する解析法が有効であるかどうかを明らかにすることを目指した. 本年度は,昨年度の成果を踏まえ,高収縮レベル(80%MVC)の持続収縮時における筋線維の収縮-弛緩速度の低下と筋音図の振幅および平均周波数の変化との対応関係を実験的に検証した.具体的には,80%MVCで随意運動中の筋に対して,定期的に最大上刺激を与え,電気的に誘発された単収縮の力曲線を得た(twitch interpolation technique).そして,得られた力曲線から,持続運動中の筋線維の収縮-弛緩速度を反映するパラメータとして,刺激が与えられた時点から力曲線が最大値を示す時点までの時間,および力曲線が最大値を示す時点から力曲線が最大値の半分になる時点までの時間を算出し,その変化と筋音図の振幅および平均周波数の変化との対応関係を調べた.その結果,筋線維の収縮-弛緩速度がほぼ一定である期間では筋音図の平均周波数は上昇し,一方,収縮-弛緩速度に低下がみられる期間では筋音図の平均周波数は下降する傾向を示した.また,筋音図の振幅は終始減少傾向を示したものの,収縮-弛緩速度が一定の期間と低下する期間ではその減少率に変化がみられた.このことから,高収縮力の持続運動時の筋疲労の進行に伴う筋線維の収縮-弛緩速度の低下を筋音図の振幅と平均周波数から推察できることを実証することができた.
|