研究概要 |
(1)ステータ突起振動速度によるバイアス値の調整 当初計画では,不感帯補償におけるバイアス値とステータ・ロータの相対角度の関係を調べる予定であったが,相対角度を変えて周波数応答実験を比較的長時間にわたり行うと,再現性のある実験結果を得ることは困難であった.そこでステータ単体として,突起の周方向振動速度を用いてバイアス値の調整を行うことを検討した.具体的には,定在波の節に近い突起面の振動速度の方が,その反対側の振動速度よりも大きい結果を得た.これは,同じ突起面で測定した突起振動速度を用いて正・逆転時のバィアス値を調整した結果が異なる原因と考えられる.よって正・逆転で反対側の突起面で測定を行えば、ロータを用いずにバイアス値を調整できると考えられる. (2)高精度位置決め制御系の構成および評価 不感帯補償法とH∞制御を組み合せた位置決め制御系の性能評価を行った.比較対象として,不感帯補償法とPI制御を組み合わせた制御系を考え,定常偏差,整定時間,オーバーシュートを比較した.定常偏差は,H∞制御,PI制御共に,測定系の分解能の範囲(約2e-5[rad])に収まった.一方,整定時間とオーバーシュートに関しては,H∞制御の方がよい結果が得られた.これは,PI補償器よりも次数が高いことにより,周波数整形の自由度が増した結果と考えられる. (3)低コスト化の検討 ディジタル補償器の低コスト化を図るために,補償器実装時の演算誤差を考慮したH∞補償器の設計手法を開発した.この手法により,閉ループ系に対する設計仕様の制約下で,補償器の係数行列が許容する加法的摂動のノルムを最大化する補償器を得ることができる.この結果は43rd IEEE CDC 2004に投稿中である.実際に設計した補償器を,計算量低減のため可制御正準形を用いてワンチップマイコンPIC16F877に実装し,望ましい制御性能が得られることを確認した.ただし,超音波モータの動特性は温度・湿度に強く依存し,再現性のあるデータを得ることが難しいため,まず,比較的再現性の良いデータがとれるアクティブ消音制御系を用いた.この結果は,超音波モータの位置決め制御系にも応用できると考えられる.
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