研究概要 |
本研究は,コンクリート中の鉄筋腐食による構造物の性能劣化過程を,数値解析により統一的に予測するシステムの構築を目的として行った.塩化物イオン等の鋼材腐食促進物質の侵入から,鉄筋腐食の開始,腐食ひび割れの発生,耐荷性能(荷重作用下における変形・破壊性状)の低下に至る全段階を研究範囲とし,実験,モデル化,統合プログラムへの組み込みを行った.本研究において,以下の成果を得た. 1)曲げひび割れ,乾湿繰返しの影響を考慮できるコンクリート中の塩化物イオン移動解析法を構築した.模擬曲げひび割れを有する鉄筋コンクリート供試体の屋外促進暴露試験を180日間行い,鉄筋に沿った塩化物イオンの濃度を測定し,解析結果と比較した. 2)コンクリート中の鉄筋を電食により強制的に腐食させる実験を行った.鉄筋の腐食量とコンクリート表面の腐食ひび割れ幅の関係について,軸方向の不均一性を考慮して定量化を行った.内部鉄筋が腐食した鉄筋コンクリート部材の一軸引張試験を行い,鉄筋の腐食量および腐食ひび割れの有無を実験変数として,腐食鉄筋およびコンクリートの引張剛性を定量化した. 3)コンクリートに連続繊維シートを接着した場合の遮塩効果を,通電試験により定量評価する方法を提案した.実験結果と数値解析を併用することにより,連続繊維シートとエポキシ接着樹脂の塩分拡散係数を同定する方法を提案した. 4)腐食ひび割れが生じた鉄筋コンクリートに連続繊維シートを接着することにより,外部補強材としての補強効果だけでなく,コンクリートの引張剛性を回復させる効果があることを実験的に明らかにした. 鉄筋コンクリート構造の力学性能の経時変化予測システムに上記の知見を導入した.今後も研究を続け,プログラム中に用いている各種の計算モデルの改良を行い,システム全体を発展させる予定である.
|