研究概要 |
高レベル放射性廃棄物の処分に関しては,人工バリアと天然バリアという2つの機能を多重に組み合わせる(多重バリアシステム)ことにより,長期間に亘り放射性物質の影響が人間とその生活環境に及ぶ可能性が極めて低い地下深部への処分(地層処分)が有力視されている.緩衝材は人工バリアの一つ要素で,オーバーパックと周辺岩盤との間に充填され,水分移動の抑制,放射性核種の吸着と移行遅延,そして物理的,化学的緩衝の役割も期待されている.緩衝材における主たる材料はNa型ベントナイトと呼ばれる粘土鉱物であるが,他材料,例えば吹付コンクリートなどのセメント系材料と背食するとコンクリート中に含有されるCaイオンとのイオン交換を生ずる可能性がある.Na型ベントナイトがCa型ベントナイトに変質すると,上述したような機能を発揮できないため,高アルカリ環境下におけるベントナイトの挙動解明が急務となっている.そこで本研究では,アルカリ溶液中に各種ベントナイトを浸漬させ,アルカリ環境下におけるNa型ベントナイトの長期変質のメカニズムを解明することを目的とした. 今年度は,ベントナイトの変質/劣化について定性的かつ定量的な知見を得るために,高アルカリ溶液に浸漬した上で反応促進を施した試料に対して,X線回折分析,膨潤試験,陽イオン交換容量試験,原子吸光分析,熱分析を行った.各種実験より,Ca型ベントナイトについては特に変化は見られなかったが,Na型ベントナイトについては,層間の水分子が1層,2層を行き来する現象が確認された.しかしながら,これは層間における水分子の動きに関するものであり,物質そのものの構造的な変化は認められなかった.上記のような多岐にわたる分析より,主だった変質はなく,今回想定したような条件下では変質はほとんど起こらないという結論を得た.
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