研究概要 |
本年度は,昨年度行った,(1)低サイクル疲労き裂の発生・進展挙動,(2)低サイクル疲労き裂先端形状の変化,および,(3)低サイクル疲労き裂からの脆性破壊発生について検討に引き続き,以下の検討を行った. (4)低サイクル疲労き裂からの脆性破壊発生への鋼材特性の影響 低サイクル疲労き裂からの脆性破壊の発生に,鋼材特性,特に,従来の定義による破壊靭性が影響するのかどうかを明らかにすることを目的として,異なる鋼材(SM490YBおよびSM570Q)を用いて小型試験体(CTOD試験体)を用意し,低サイクル疲労き裂を導入後,温度制御下で温度をパラメータとして,CTOD試験を実施した.その際,通常のその結果,鈍い先端を有する低サイクル疲労き裂からの脆性破壊発生の可能性は,鋼種に依存することが明らかとなった.SM490YB材では,通常の高サイクル疲労き裂を初期き裂とした場合脆性破壊が発生した温度で,同様に脆性破壊の発生が確認されたのに対し,SM570Q材では,その温度では脆性破壊の発生が見られなかった. (5)低サイクル疲労き裂からの脆性破壊防止法の提案 本研究の以上の成果をもとに,低サイクル疲労き裂からの脆性破壊の発生シナリオを大別して2つに整理した.1つは,繰返しひずみを受ける中で発生した低サイクル疲労き裂の先端が引張ひずみにより鈍化し,その状態から過大な引張ひずみを受けて脆性破壊する場合,もうひとつは,発生した低サイクル疲労き裂先端が圧縮ひずみにより鋭い状態になったとの引張ひずみで脆性破壊する場合である.本研究では,これらのうち,後者のシナリオで発生する脆性破壊がより小さい限界CTOD値で生じ,発生可能性が高いことを示したうえで,それが鋼材の選定により防止できることを示した.
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