研究概要 |
揮発性有機化合物に汚染された地盤環境を浄化する技術の中で,土壌に固有な微生物を利用する原位置バイオレメディエーションは,他の物理的や化学的なものよりもコストがかからないため,今後普及していく可能性の高い技術である.この技術には,微生物の活動に必要な栄養源などを与えて汚染物質の分解を促進させるenhanced bioremediationと栄養源などを与えない自然条件下での分解を期待するnatural attenuation(自然減衰)がある.本研究では,natural attenuation(自然減衰)に注目して,複数の汚染サイトでデータを収集・解析し,土壌に固有な微生物による汚染物質の分解メカニズムを明らかにする.また,得られた結果から,揮発性有機化合物に汚染された地盤環境の浄化対策に自然減衰効果を利用できるか検討する.利用可能な場合には,自然減衰効果を用いた浄化対策の手順を作成,提案する. 研究初年度の平成14年度は,トリクロロエチレンによって汚染された地下水を地下水揚水法によって浄化している現場を対象に,データの収集と分析,現場における微生物分解効果の評価を行い,また数値シミュレーションモデルの開発も実施した.現地調査から,現地の地下水中ではTCEの微生物分解が生じており,TCEとその分解生成物であるDCEsの濃度比がほぼ一定に保たれていることが確認された.また,現場データをもとに実施した数値シミュレーションでは,微生物分解の速さを表す尺度である分解速度定数の評価を行った.得られた分解速度定数を半減期に換算すると,TCEで約0.95年,DCEsで約0.45年であり,DCEsはTCEよりも比較的容易に分解されていることが確認された.この原因としては,現場の地下水中におけるDCEsの直接酸化の影響が考えられた.
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