研究概要 |
1964年の新潟地震以来,液状化に及ぼす要因が明らかにされてきた.しかし,飽和度に関しては,国内外の研究から,一般に飽和度の低下が液状化強度を増加させるという知見はあるものの,一方で原地盤の飽和度を直接測定する技術が現在のところ開発されていない.また,飽和度と液状化強度に関する既往の研究では,ほとんどが室内における再構成供試体の試験結果であり,原位置から採取した不撹乱試料において実施した同様な検討例が少ない.本研究では、実際に原位置で計測したP波速度と原位置から採取した不撹乱試料におけるP波速度を比較検討することにより,原位置飽和度の推定と飽和度を考慮した液状化強度の評価手法について検討した. 沖積低地における原位置調査から地下水面近傍では,水の伝播速度よりも低いP波速度(Vp=700m/s)が得られた.一方,不撹乱試料において,任意のB値においてP波速度を調べたところ,地下水面近傍の低P波速度領域の原位置のB値は,多孔質弾性理論をもとに約0.75を示すことが確認された.既往の室内試験結果から,P波速度はB値と良い相関性があることが確認されているため,供試体のP波速度が得られれば原位置のB値を推定できることがわかった.液状化強度については,不撹乱試料の非排水繰返し三軸試験結果より,完全飽和時(B≧0.95)の液状化強度をRs,不完全飽和条件(B<0.95)における液状化強度をRuとして液状化強度増加率Ru/RsとP波速度の関係を見ると,概ね単一な相関関係が得られ,P波速度が700m/sよりも小さくなると,Ru/Rsが次第に急増していく傾向にあることがわかった.したがって,原位置で計測されたP波速度を利用し,多孔質弾性理論に適用させることにより,原位置におけるB値と不完全飽和状態を考慮した液状化強度が推定可能であることがわかった.
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