研究概要 |
(1)昨年度に引き続き,提案手法の有効性および適用範囲をさらに検討するため,昨年度に開発した計測処理システムを用いて,モンテンルパ(フィリピン)および境港市(鳥取県)の複数地点において交通振動のアレイ(同時多点)計測または1点3成分計測を行い,それに含まれるレイリー波の位相速度および距離減衰特性または表面波のH/Vスペクトルを求めた.交通振動の振動源としては,一般車両走行のほか,大型車両走行や鉄道車両走行などを利用した.計測された位相速度および距離減衰特性あるいはH/Vスペクトルについて,基本モードから高次モードまでの影響を考慮した逆解析を行って,表層地盤のS波速度構造を推定した.推定された構造は,用いた振動源の種類とは関係なく,既往あるいは別途に実施したボーリングやPS検層等の地盤調査結果と概ね調和的であった.このことは,振動源の種類とは関係なく,交通振動のアレイまたは1点3成分計測に基づいて表層地盤のS波速度構造を精度良く推定できること,すなわち提案手法の有効性を示している. (2)(1)で地盤構造を推定した地点のうち境港市の3地点およびこれより約5km北東に離れた岩盤地点では,2000年鳥取県西部地震における本震記録が得られている.そこで,この岩盤地点の地震記録および推定地盤構造に基づいて,地盤の液状化を考慮した1次元の地震応答解析を行い,境港市の3地点での本震地震動を推定した.ただし,地盤の液状化などの非線形挙動を規定するパラメータの値は,既往のボーリング調査結果等に基づいて仮定した.実地震記録および本震時の地盤変状や噴砂現象の有無等との比較から,推定された地震動の妥当性を確認した.以上の結果は,本提案手法により推定された表層地盤構造を用いて地盤の地震時挙動をある程度把握あるいは予測できる可能性を示している.
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