研究概要 |
閉鎖性の強い内湾における海水流動を解く鍵は大気海面過程にあるという立場から,局地気象モデルMM5と海洋モデルPOMをモデルカップラーによって結合し,メソスケール大気海洋結合モデルを構築した.そして,この結合モデルを伊勢湾に適用し,計算精度の検証を行った. まず,大気海面過程の計算精度の鍵を握る海上風の計算精度を上げるために,MM5に実装される5つの大気境界層モデルの計算精度の比較を行ない,Etaスキームが最も安定して良い計算精度を示すことを明らかにした.次に,本研究で構築された大気海洋結合モデルの計算結果と海洋モデルPOM単独(海面での気象要素は陸上観測値を補間,海面フラックスはバルク式・経験式にて算出)の計算結果を比較した結果,日射量が過大になるなどいくつかの問題点はあるものの,海面フラックスの高精度化が計算精度の改善につながることにより,大気海洋結合モデルの有用性を示すことができた. 海洋モデル側の高精度化としては,POMに代わる新たな海洋モデルを作成した.従来POMではσ座標を用いているため,海底勾配が急な場合や浅海から深海までを連続的に解く場合に問題があったが,新たに構築した海洋モデルCCM(Coastal Current Model)では,σ座標を多重化することによりその問題を克服することができた.また,CCMでは,海面での砕波過程を定式化し乱流諸量の海面境界条件を高精度化することにより,海面付近の海洋場の計算精度が向上することを示した.それ故,MM5+CCMからなる大気海洋結合モデルを本研究のメイン・プロダクトとする.
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