研究概要 |
下水および河川水から顕微鏡下で単離したクリプトスポリジウムオーシストの遺伝子型をPCRおよびダイレクトシーケンシングによって特定する手法を確立した。本法は18S r RNA領域の多型部位を標的として,Cryptosporidium属の種や遺伝子型を識別でき,宿主特異性の差異を把握することができることから,水道原水や下水などのCryptosporidiumの検査に適用することで,従来法では把握できなかった汚染源や人への感染性など,公衆衛生上極めて重要な情報を得ることができる。 実際に本法を下水および河川水の調査に適用したところ,下水では6ヶ月間の74個のオーシストについて解析を行い,その51%が人を固有の宿主とするCryptosporidium parvum genotype 1であることが明らかになった。その他,人獣共通感染型であるC.parvum genotype 2およびC.meleagridisも検出された。このことから,本地域(都内の人口集中地)では人のCryptosporidium症はC.parvum genotype 1によるものが主流であり,下水が再び水源や水域の汚染源となりうる可能性が示唆された。 河川水の調査でも同様に人を固有のタイプとするC.parvum genotype 1が単離した18個のうちの72%をしめ,未処理の家庭排水等,人に起因する排水による汚染が強く示唆された。
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