研究概要 |
本研究は,鉄筋コンクリート造(以下,RC造)の構成材料であるコンクリートの二軸応力下における軟化性状に起因するRC造耐震壁のせん断軟化性状がRC造耐震壁フレーム構造の応答性状,耐震性能に与える影響を解明することを目的とする解析的研究である. 平成15年度は,平成14年度の解析対象(6層のRC造ピロティ建物およびそのピロティ階を補強した整形な建物)に加え,新たに10層,14層の建物を設定し,本構造の静的な耐震性能,動的な応答性状について引き続き検討を行った.以下に,その内容と得られた成果をまとめて示す. 平成14年度の解析対象であった1階が柱と耐震壁により構成される6層のRC造ピロティ建物(ピロティを有する耐震壁フレーム構造)およびそのピロティ階を補強した整形な建物に加えて,新たに10層,14層の整形,不整形な建物を6層建物と同様のコンセプトの下に設計した.これらの建物を対象に,建物高さ,1階壁率,外力分布を主なパラメータとするPushover解析を行った.その結果,(1)建物の弾性域から全体降伏点近傍までは,建物高さが高いほど,1階の壁率が大きいほど建物の曲げ変形が卓越したが,その後は,RC造耐震壁のせん断軟化により,建物高さに関わらず,且つ,1階の壁率すなわち建物の整形,不整形に関わらず,変形が脚部に集中し,最終的に耐震壁が脚部でせん断破壊して層崩壊すること,(2)外力分布として逆三角形分布より矩形分布を想定した方が建物への入力せん断力が1.1〜1.3倍程度大きくなり,靭性能が大きく低下することなどが明らかとなった.また,同様の建物を対象に地震応答解析を行った結果,(3)RC造耐震壁のせん断軟化の影響を受けて,整形,不整形な建物に関わらず,建物への入力せん断力が大きく増大する(外力分布として矩形分布を仮定したPushover解析結果よりも増大する)場合があることが解析的に示された.
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