主に戦前期の観光案内書地誌等を検索し、「遊園地」と考えられる事例を列挙して全国的な開設動向を把握しつつ、それらの関連情報を集め、立地や形式などについて分類した。ここで、遊園地とは、不特定多数に供する私営の娯楽施設で、多数の娯楽設備が複合的に配置されているものと考えた。 この結果、こうした娯楽施設は、東京と大阪の近郊において特に多く、各20以上の事例を確認できる。一方、これ以外の地域においては、数が限られる結果となった。特に、東北地方以北の地域には目立って少ない。寒冷地であり、年間の開園期間が限られることが、現代よりも直接的に影響したことが理由と思われる。 このほか、函館、仙台、金沢、名古屋、広島、小倉、福岡、鹿児島などの地方の主要都市で見られたが、各都市1乃至2例ずつ程度しか見受けられない。また、このほか、別府などの主要観光地にも、同様の施設の開設事例が確認された。ただし、相応の規模を備えた事例は、細部が不明なので正確な数字を示せないが、多く見積もるとしても全国で十数例程度に止まった。 また、前記した条件を典型的に満たす事例に限られない多様な形式を見ることが出来た。例えば、料亭が規模と設備を拡充させた事例や、景勝地を観光客に供するよう整備した事例、温泉街などの観光地そのものを開発して、それを娯楽施設としての遊園地に見立てる事例、私営でありつつも公益的施設で公園と酷似する事例などが見られた。また、寺院が参拝客誘致のために、娯楽設備を境内に配置して遊園地と称するなど、初期の遊園地の成り立ちを思わせる興味深い事例も見られた。 以上は、主に観光案内という遊覧者本位の媒体の記録に基づくため、必ずしもどの地域からも均一にデータを拾っているとは言えないもので、今後も情報の渉猟が必要な内容だが、戦前期の日本における同類施設の開設動向をある程度俯瞰することができた。
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