研究概要 |
研究にはTi-35at%Al-15at%Vを用いた.鋳造後,HIP処理を施したインゴットから,板状の試料を放電加工にて切り出し,1300℃,900sの溶体化処理後,室温水中に焼き入れ,β単相とした.昨年度に引き続き恒温時効と同時の電気抵抗測定による相変態挙動の追跡,今年度新たに透過電子顕微鏡による組織観察を行った. 昨年度より恒温時効の温度域を広げ,260〜350℃で10℃おきの時効とともに電気抵抗測定を行った.その結果,潜伏期間,成長,飽和を示す典型的な拡散型相変態ものとよく似た変化曲線が得られた.この変化曲線は,昨年度と同様に変化速度の著しい温度依存性が見られた他,焼き入れ速度による違いが見られた.後者は,溶体化後の焼き入れ時において,既に何らかの組織変化が起こっていることを示唆するものである. 透過電子顕微鏡による組織観察は,焼き入れ直後のもの,および電気抵抗変化が飽和に達する330℃で1x10^5s時効した試料について行った.焼き入れ直後の試料の観察結果からは,溶体化後の焼き入れによって単相状態が得られていることが確認された.しかしながら,電子線回折像には,B2構造のスポットの他,非常に散漫なω相のものと思われるスポットも現れていた.330℃で1x10^5s時効した試料では,焼き入れ直後のものと比べ,明確な新相の発現は認められないものの,種々の反射による回折コントラスト像にω相の特徴である微細なツイード状模様が明確に現れていた.さらにこの電子線回折像では,ω相による散漫なスポットがより強く現れていた.以上の観察結果から,時効による電気抵抗値の変化から得られた変化曲線は,焼き入れ時に出現したω相の成長,つまり,ω変態の過程を示すものと考えられる.現在,より詳細な解析を進めているところである. 今回明らかとなったω変態は,研究課題にあるマルテンサイト変態とは異なるものであるが,マルテンサイト的な原子移動を含むものと言われており,関連する相変態として研究を進めている.
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