研究概要 |
高純度の純Al, Al-1%Mn合金,Al-3%Mg合金を用いて、温間・異方向圧延中の動的連続再結晶による超微細組織形成機構を結晶方位差,結晶粒径から明らかにすると共に、降伏応力,引張強度,硬さなどの強度特性を平均結晶粒径に対してHall-Petch型に整理した。累積圧下率の増加に伴って結晶粒界の高角化はより顕著となり、平均結晶粒径は徐々に減少する傾向がある。得られる亜結晶粒径はAl-3%Mg合金が最も小さく、次いでAl-1%Mn合金,純Alの順番となった。これは添加元素による亜結晶粒の成長抑制効果によるものと考えられる。特に圧延温度623Kにて90%の累積圧下率を与えたAl-3%Mg合金では、0.7μmもの超微細なナノ亜結晶組織を形成した。また、温間・異方向圧延材ではST-LT両の中央部と端部でほぼ同じサイズの均一な亜結晶粒組織を呈するが、温間・一方向圧延材は端部の方が中央部よりも明らかに細かい不均一なミクロ組織が観察された。このような組織状態を反映して、温間・異方向圧延材ではST-LT面の中央部と端部でほぼ同等な強度特性を有しているのに対し、温間・一方向圧延材は端部の方が中央部に比べて明らかに硬くなった。ナノオーダーの超微細亜結晶組織をもつ試料の強度は、等温焼なましによって結晶粒径をミクロンオーダーのサイズに調整した試料の強度を平均結晶粒径の平方根の逆数に対して整理した延長線上にプロットできることを明らかにした。すなわちAl合金のナノ結晶領域においてもHall-Petch則の成立を確認した。またそれらの固着係数KyはAl-3%Mg合金が最も大きく、次いでAl-1%Mn合金,純Alの順番となり、Al母相中における溶質元素の格子ひずみの大きさに関連があることを指摘した。
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