研究概要 |
先進型発電用ガスタービン動静翼部などのクリティカルな熱的-機械的-化学的複合負荷を受ける高温部材では,優れた耐久性と信頼性を有する遮熱コーティング(TBC)システムが必須構成要素となっている.しかし,実機作動条件下で動静翼に作用する熱機械的損傷要因は翼の部位によって著しく変化するため,高性能TBCシステムの設計・開発に向けて高温域のみならず,低温域での基本的強度特性や損傷き裂発生・進展挙動を考慮した損傷メカニズムの解明が重要な検討課題である. 本研究では,熱的負荷条件下でトップコート(TC)/ボンドコート(BC)界面に発達する酸化物(TGO)層の成長抑制法として,これまでに提案した雰囲気制御後熱処理法の有効性を実証するとともに,さらに室温から高温までの広範な温度域で試験可能な機械的負荷装置を有するTBCシステム損傷挙動その場観察装置を開発し,各種TBCシステムを対象に室温と高温下で引張あるいは圧縮負荷における損傷挙動をコーティング微構造と関連づけて詳細に検討した.主な成果を以下に示す. 1)TBCシステムの損傷劣化挙動は,試験温度に強く依存し,BC層の延性-ぜい性遷移温度以上の高温域では,引張だけでなく圧縮負荷においてもBC層の大規模な塑性流動によりTCはく離が抑制される. 2)室温では,いずれのTBCシステムも引張および圧縮負荷条件下でTCはく離を生じ,とりわけ不均質で厚膜のTGO層は,TCはく離を誘発する損傷き裂の発生・進展を助長する.それゆえ,一連の研究で提案した雰囲気制御後熱処理などによるTGO成長の抑制技術が極めて重要である. 3)室温におけるTBCシステムの強度特性は,荷重負荷様式に依存し,特に圧縮負荷に対してはち密で厚膜のTC層は優れた荷重負担機能を発揮し,降伏強度は向上する.しかしその反面,TC層の大規模なはく離を偶発的に生じる危険性もまた増大する.
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